東北の旅~新年の抱負(タンノイ、パラゴン、三共無線)
2018年 皆様今年もよろしくお願いいたします。
さて、です。
趣味に休み無し。
正月一日から頭の中には音楽とオーディオのこと。その他諸々。
しかし今年は、少し思うところがあり、事始めの前に書いておきたいと思います。
一月ほど前になりますが、オーディオ天国を訪ねて、東北へ行ってきました。
・サロンのようなオーディオルームで、タンノイを聴きました。
突然の訪問だったのですが、ご主人のご厚意に甘えることが出来ました。ウェストミンスター・ロイヤルと、レクタングラー・ヨークをメインに据え、心地よく鳴らすご主人は、オーケストラやジャズバンドを前にしたとき、肌で感じたときの感動を再現することに、静かな情熱を燃やされていると感じました。オーディオを探求する人は、誰しもそういう一面があるものと思っているのですが、しかしご主人は、「そんなことは望むべくもないですけど」と謙遜されるのです。演奏は、それぞれの楽器の名手が大勢集まって奏でているものだから、どれだけのお金をつぎ込んでも再現できるわけがない、というのです。確かに、生演奏の「再現」は不可能とは納得するのですが、こちらのタンノイは、お金の重みではなく、ご主人の思いを、確かに汲み取っているよう思えてならないのでした。それで、もう少しお話を伺うと、奇跡的に故障修理歴のないマランツ7は球替えを探求・吟味してあり、これと思った英国のパワーアンプ、TVAは期を逃さずに手に入れてきたということです。さらには工業用のトランスを手に入れて、低圧電力での引き込みもされているとのこと。ある業界で技術者を長くされていたというご経歴を伺うと、その経験が趣味探求の姿勢にも活かされているのではと思った次第でした。
・山のコテージを思わせるジャズ喫茶で、吠えまくるパラゴンと逢いました。
初冬の東北は、日が暮れると途端に冷え込んできます。車の外気温はずっと一桁も下の方を指していて、南関東の人間にはそれだけでもう凍えてきます。そんな中、訪れたのは、「ハーフノート」という喫茶店です。
静けさの中、建物から漏れ聞こえてくる音楽に誘われてドアを開けると、紛れもなく「そいつの棲み家」でした。
ゴジラ、ドラゴン…、怪獣は映画でよく炎を吐きますね。まさにそんな熱気に満ちた喫茶店です。時々お邪魔する友人のお宅のパラゴンも、圧倒的に熱く咆えるのですが、こちらのパラゴンも凍えた旅人の体を一瞬で熱くしてくれました。ガラスの向こうのブースにはターンテーブルと、CD用に、なかなかお目にかかれないデンオン業務用(961?)が収まっています。パラゴンをドライブするのは、マッキンの2500?をモノ使いでで2台のようです。…「?」をこんなに打つくらいなら、マスターに詳しく見せてもらえばいいのに、ブースを覗こうとするたびにパラゴンが凄みのある声で懐いてくるので、どうにも機を逃してしまうのです。
店を離れる間際、マスターと話が出来ました。ブースの中の機材も気になっていたのですが、実はそれよりも気になることがあり、どうしても聞いておかねばならない気がしていたのです。
「どうしてパラゴンにされたのですか?」
「これ以上のものはないと思ったからですよ」
即答でした。…なるほど、それは怪獣の機嫌も良いわけです。
それともう一つ、パラゴンの両脇に行儀良く収まっている一対のフロアのスピーカーが気になっていました。あれは一体、なんですか?と訊ねると、「タンノイのモニターゴールドが収まっている箱」とのことでした。お店の常連の方から、津波被害に遭った自宅が再建されるまで…と、預かったものだそうです。
・翌日、「三共無線」へ…。
三共無線と言えば、愛読雑誌「ステレオ時代」でも特集された、音楽とオーディオを愛してきた人々の聖地です。音楽ソフトと程度の良い中古オーディオを扱う「矢巾店」と、その裏のリサイクルショップ「ビッグガレージ」からなる販売店です。ビッグガレージには、オーディオだけにとどまらず様々なものが集まってきているので、日本のお茶の間の半世紀を物語る博物館のようでもあります。
社長のご厚意で、サンスイやトリオ、パイオニアが飛ぶように売れた時代のお話や写真を拝見して、いざ店内探検が始まりました。
いや、もう、圧倒的です。
「写真、撮ってる場合じゃない」
鼻息荒く見ていくのですが、見ても見ても終わらない。プレーヤー、デッキ、アンプ、チューナー…、足元を見ればレコード、レコード売り場にもレコード、上を見ればスピーカー、下にもスピーカー、スピーカータワーもある…。
何が出てきてもいいように、お金を貯めてきました。
けれど、だんだん自信がなくなってきましたよ…。
そんなときでした。
小さなお子さんを連れたお母さんが「おじいちゃんが使ってたスピーカーがあるんですけど…」とスピーカーの買い取り依頼にやってきていました。店先に下ろされたのは、60年代から70年代初頭のデザインのフロア型スピーカー…、だいぶ長いことお茶の間に置かれていた雰囲気があります。箱は山水らしいのですが詳細不明のスピーカーです。三台目小林さん(社長のお孫さん)が裏蓋を外すと、写真のようなユニットが…。
グッドマン、ファンは多かったと聞きます。おじいさん、若かりし日に、悩みに悩んだ末に選んだユニットなのでしょう。だとしたら、だいぶ長く愛されましたね。そして今度は、誰か別の愛好家の方の許に渡っていくんですね。…そういう目で改めて三共無線を振り返ると、少し自分の気持ちが落ち着いてきました。「コレだと思えるものを探そう」です。
そしていただいて帰ったのが、次の品物です。このあたり今年のブログでご報告していきます:)
さて。
短い旅でしたが、思うところがありました。
趣味としてのオーディオは、すでに半世紀以上の歴史があって、多くのファンをもち、自分もその中の一人であり、そのことに気概を持って「楽しんで」いきたい…と、そいういうところです。人それぞれ、自分なりの楽しみ方を追求していくことが、オーディオの文化を豊かにしてくれると信じている次第です。
(今回お話をさせて頂いた皆様、一緒に旅したF田さん、ありがとうございました)
リンク集
・聖地? アマゾン?「三共無線」
・今度はナマロク?「ステレオ時代ブログ」